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法改正:欠格条項撤廃で進む障害者の運転免許取得
                             1月11日 読売新聞 

〜新条件設定には障害者団体、事故遺族の会双方から懸念が〜         

「このままでは、障害者の社会参加が制限されてしまう」。障害者の差別撤廃運動を進めてきた「障害者欠格条項をなくす会」は8日、警察庁との協議の席上、同庁が先月公表した道交法施行令の改正試案の大幅な見直しを訴えた。

今回、施行令が改正されることになったのは、昨年8月に成立した改正道交法で、精神病者や特定の身体障害者などの免許取を一律に拒んできた欠格条項が撤廃されたため。
その代わりに施行令を改正し、精神分裂病、てんかん」低血糖症、そううつ病といった病名や障害名を具体的に指定したうえで、症状に合わせた免許取得の条件を規定することになった。その改正試案では、たとえば精神分裂病の人も、主治医の診察や、専門医による臨時適性検査で「症状が軽いか、再発の恐れは認められない」と判断されれば、免許を取得できることになる。同庁によると、現行制度では臨時適性検査を行うかどうかは、過去の交通事故で偶然見つけた病気の症状で判断するしかない。

このため試案では新たに、英仏両国や米国の一部の州の制度と同様、自己申告制を導入することにした。申請書類には「過去に病気で意識を失ったことがあるか」といった質問条項を設けて、該当者にはチェックしてもらう形式になる見込みだ。
こうした手続きについて、なくす会が最も問題視しているのは、病気にかかっているというだけで危険性を疑われてしまうという点だ。同会共同代表の牧口一二さんは「試案は『障害者だから人をはねる危険がある』という発想に基づいており、障害者に対する差別を助長することにもなる」と懸念。「持病があってもセルフコントロールをしながら安全に運転している人の免許まで奪われる可能性がある」とも指摘する。

これに対し、警察庁は8日の協議で、身体障害者に免許取得に必要な補助器具などの
アドバイスをしている「運転適性相談窓口」を充実させ、精神障害者の免許取得に向けた環境整備を進めることを約束した。ただ、交通安全を確保する観点から、試案の見直しは不可能との見解を示している。

一方、まったく逆の視点からの懸念や批判も少なくない。中でも、「全国交通事故遺族の会」は、現行の欠格条項に該当する人に対し、▽免許申請時に診断書の提出を求める▽定期的な健康診断を義務付ける−ことを強く求めている。
自己申告制と臨時適性検査をセットで導入する今回の試案について、「それだけでは免許の有効期間中、ずっと事故を起こさないという保証にはならない」というのが遭族の会の主張だ。同会副会長の戸川孝仁さんは「安易に運転免許取得の条件を緩和して事故が起きた場合、世論の批判が集中して、障害者の社会参加が逆に難しくなる可能性もある。
制度を定着させるためにも、我々のような交通遺族も納得できる内容でなくてはならないはずだ」と主張する。

警察庁は今回の試案について17日まで一般から意見を募り、来月上旬にも改正施行令を公布する方針だ。新制度の趣旨は免許を取るべき人が取り、危険な運転者を制限することにある。その趣旨を生かし、交通安全と障害者の社会参加促進が両立するか。現場の適切な運用が求められる。


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